COLUMNS

2024.3.15

BACK IN THE 1970s~「激動の日本経済を生き延びた、国宝の輝き」(大阪市立東洋陶磁美術館)

世界有数の名品ながら 散逸の危機に瀕した 国宝《飛青磁 花生(とびせいじ はないけ)》

大阪市立東洋陶磁美術館

image

お酒を飲みほした後に、春の可憐な花を一輪挿してみたくなる端正な姿の瓶

鉄斑を散らした青磁は日本では「飛青磁」と呼ばれ、中でも本作は釉色・鉄斑の現れ方が優れた名作。俗に玉壺春瓶と呼ばれる容器で、ほっそりしたくびと豊かに膨らんだ胴部が好対照をなし、見事な均整美を見せています。

国宝に指定された本作が、1960年代には民間企業 のコレクションとなりました。所蔵者は戦後大阪で十大商社の一つに数えられた安宅産業株式会社。収集の中心人物は、元会長・安宅英一氏。彼の透徹した美意識が反映されたコレクションは世界有数の東洋陶磁コレクションと言われ、百貨店での展覧会を中心に作品が公開されると注目を集めるようになりました。しかし、安宅産業はその後に経営危機に陥り、その歴史に幕を閉じました。コレクションの行方が注目される中、 主要取引銀行の住友銀行をはじめとする住友グループが、売却ではなく大阪市への寄贈を英断。これらの作品を引継ぎ、展示・保管施設として大阪市立東洋陶磁美術館が開館しました。

安住の地を得て静かに佇む花生を通して、時代の大きなうねりを感じることができます。

▼国宝 元時代 14世紀 龍泉窯 飛青磁 花生(とびせいじ・はないけ)

広報誌『大阪ミュージアムズ』第28号より