大阪博と大阪の宝
2025年大阪・関西万博に合わせて、大阪市立美術館・大阪市立自然史博物館・大阪市立東洋陶磁美術館・大阪市立科学館・大阪歴史博物館・大阪中之島美術館の6館では、「大阪博」を開催します。
大阪には、古代から現代に至るまで、都市の繁栄とともに先人たちが収集、継承されてきた「大阪の宝」があります。
今回はその中でも、特にその収集に関わった先人や継承の履歴を通じて、それらを育んできた都市大阪の魅力を体感できるような代表品120点を「大阪の宝」として選定し、「大阪博」で披露します。
新たな知的好奇心を呼び起こす「大阪の宝」web展覧会をはじめ、ミュージアムを巡って遊ぶプランや観光情報など、多彩なコンテンツを発信します。
大阪に暮らす人々と、この街に集う人々のためのミュージアムが開催する「大阪博」。
文化都市・大阪に残されてきた宝との出逢いと、
人々が紡ぎ出してきた街にあふれる大阪の力を、どうぞお楽しみください。
大阪博のコンセプトCONCEPT
Life・Museum・Osaka
「大阪博」のコンセプトは「Life・Museum・Osaka」です。
大阪の博物館は、大阪に暮らし、大阪に集う皆さんのLife(生活、人生、生きがい、生命…)に新しい視点や感動をプラスする知識と体験を提供します。
そして次世代へとつながる知性を育くんでまいります。
一人ひとりのよりよいLifeのため、先人たちから受け継いだ文化都市・大阪の輝きを未来へつなげるため、わたしたち大阪の博物館は「Life・Museum・Osaka」のコンセプトのもと「大阪博」を開催し、未来へ向かって進みます。
「大阪の宝」ストーリー
大阪は都市として長い歴史を歩み、「民」の力がそれを支えてきた点に特長をもつ。
その足跡を振り返ると、まず立地環境として今から約150万年前に誕生した瀬戸内海の東側玄関口にあたり、淀川・大和川が流入するとともに陸路との結節点に位置したことが重要である。それにより大阪は国内外を結ぶ交通・物流・交流の拠点という通時代的な特長を備えるとともに、豊かな自然や生物の多様性を育んできた。
6世紀以降、活発化する日本と中国・朝鮮半島との対外関係を見据え、大阪には国家的港湾である難波津が、また7世紀・8世紀には難波宮が設置された。これらは大阪の都市としての原点であり、これ以降大阪は国際性を帯び、かつわが国では稀にみる継続性をもつ都市として歩んできた。
その後、16世紀の大坂本願寺・寺内町は信仰を介して大阪の存在を全国に知らしめ、続く豊臣秀吉は大坂城・城下町を設け、ここを拠点に全国統一を実現した。これにより大阪の政治・経済・文化面での求心力と活力は一気に高まった。
それらを引き継ぎ成熟させたのが江戸時代である。江戸時代の大阪は城下町であるにもかかわらず武士の数が少なく、住人の多くを町人が占める珍しい都市であった。そのためインフラ管理や町運営を主体的に担ったのは町人であり、かつ彼らは「天下の台所」と呼ばれた大阪、そして日本経済を支えたのである。さらに町人たちはその富裕な経済力を背景に文化・芸術活動のパトロンとなったり、自身がその道で名を成したりした。また多様な食や優れた芸能の普及も彼らの存在なくしては語れない。市井の人びとによって育まれた文化的土壌は近代以降へも引き継がれていくこととなった。
近代に入ると大阪は重工業都市として発展し、1925年には第二次市域拡張により日本一の人口を誇る大都市となり、その前後に実施された先進的な都市政策もあいまって大阪には活気が満ち溢れた。この繁栄を支えたのがやはり「民」の立場の人びとであった。そして彼らのもとには貴重な美術品・資料が集められ、優れたコレクションが形成された。
1945年まで続いた太平洋戦争により大阪は深刻な被害を受けた。しかし、高度経済成長期を経て都市大阪の再生が図られ、また1970年万博を契機として未来への指向が高まり、現在に至っている。
以上の過程で活躍し、次世代に大きな影響を与えた出来事や人びとは枚挙にいとまがないが、難波宮と大化の改新、豊臣秀吉による大坂城と都市計画、江戸時代の町人学者木村蒹葭堂(きむら けんかどう)や間重富(はざま しげとみ)、日本で最初の科学教育機関となった舎密局(せいみきょく)、近代絵画の佐伯祐三や島成園(しま せいえん)をはじめとする女性画家たちの存在・活躍は特筆されるべきものである。
これら大阪にかかわる美術品・資料や「民」によって収集された優れたコレクションは、戦前に開館した大阪市立美術館や大阪市立電気科学館(現・大阪市立科学館)、そして戦後に整備された大阪市立自然史博物館・大阪市立博物館(現・大阪歴史博物館)・大阪市立東洋陶磁美術館、近年開館の大阪中之島美術館へと寄贈・継承され、当機構6館を代表する収蔵品として市民、そして世界へと発信を続けている。
このように大阪は環境・風土をベースに市民たちの躍動によって都市としてたゆみない歴史を積み重ねてきた。これが大阪の特色であり、それを象徴するのが「大阪の宝」である。
現代社会はグローバル化がもたらした世界的な緊張や急速な変化に見舞われており、人びとが真に豊かで心安らぐ生活を求める動きが加速化している。そのなかでの「大阪の宝」の展示は、当機構6館にとってこれまでの大阪の文化的蓄積を発信するにとどまらず、次世代を見据えた活動の起点と位置づけられるものである。
それは市民や来訪者が博物館・美術館を通じて文化都市・大阪の可能性を感じるのみならず、学びのおもしろさや多様な価値観の大切さを知り、自らのLifeが新たな文化価値創出の気づきとなり、そこから大阪の存在感を高めることにつながっていくことが期待される。
当機構6館は大阪市博物館機構連携企画「大阪の宝」展を開催することで伝統を未来へと引き継ぎ、今後さらなる機能の充実をはかり、大阪の文化的発展に寄与していくものとする。
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